筆者は所謂”距離ガバ勢”である。
1回のツーリングは基本的に500km程度が普通、という状況だ。
なお、地獄のTwitterランドを覗いてみると1日1000kmを超えるツーリングを日常的にこなしている「本物の距離ガバ」がいるため、自称するのは烏滸がましいかもしれない。
ただ彼らと共通したところがあり、バイクに乗ったら最後、基本的に休みは取らない。
無論、トイレに行きたくなるので飲食も基本は取らない。
写真を取りたい場所に出会った時、トイレに行きたくなった時、そして死にそうになった時以外は基本的に停車しない。
なぜこのような苦行に近しい行為をしているのかは最早自分でもわからない。
誰か教えてくれ。
さて、そんな事をしていると必ず直面するのが「臀部の痛み」である。
基本的に休憩を取りたくない筆者にとってこの問題は、必ず克服すべき宿題と言えるだろう。
ということで己のケツと真っ向から向き合うに当たり、試行錯誤した結果を記していこうと思う。
試行錯誤シリーズ1回目は以下を参照。
バイクの臀部の痛みとは何か
尻の痛み
バイクの尻(ケツ)痛問題の原因として考えられるのは血流不良だ。
長時間の同じ姿勢、及び臀部の一部のみに圧力がかかる事による血行の滞りによって発生するものと思われる。
これはどんなフカフカクッションであろうと発生するものであり、座り直しや着座位置をずらすなどの行為を行い対処する必要がある。
なおこれらは無意識のうちに実施するような生理的な現象であるため、日常生活においてはあまり自覚することは無いかもしれない。
ことバイクに至っては着座位置はほぼ固定されているようなものであり、更には両足は常に垂れ下がった状態。
シートもフカフカと言えるものは少ないという実状も相まって、よりケツ痛が発生しやすい状況となっている。
筆者の愛車、Vstorm 650 XTも比較的フカフカではあるが、例に漏れず5時間くらいでケツが痛くなる。
特にオフ車なんて三角木馬と揶揄されるぐらいに薄っぺらいシートを装備している。
友人のKLX250に乗せてもらったことがあるのだが、1時間足らずで筆者のお尻は見事に爆散した。
誠に由々しき問題であると言えるだろう。
鼠径部の痛み
“鼠径部”とかおしゃま放いてますけど、要は金玉の痛みです。
金玉の痛みは前傾姿勢による金玉の圧迫、もしくは下着による圧迫が考えられる。
前者はよほど前傾姿勢でないとタンクに押し付けられる形にはならないので、競技用モデル或いは腕の長さが足らない(体型に合っていない)モデルに乗車しているという話になるので、”乗り換え”か”現状維持”以外の解決策がない。
下着による痛みは、「バイクシートの上に乗っかるボトムスに乗っかる下着に乗っかる金玉」というミルフィーユ構造により、バイクの細かな振動で徐々にボトムスと下着が後方へ滑っていくことで、ボトムスと下着による二重での金玉圧が掛かるという理不尽な事象となる。
直接的なダメージは下着の形状によるものが大きいため、ここでは「下着の痛み」と呼称している。
これもまた物理的に避けられない事象だ。
着衣する下着の形状、及びニーグリップの強化である程度の対処は可能だが、男性である以上必ず向かい合わねばならない事象と言えるだろう。
傾向と対策
傾向も何も、臀部が痛えって話なのではあるけども。
その名の通り「坐骨がシートに接触する」ことによって、その周辺の皮膚及び筋肉、ないし血管が圧迫されることに伴う痛みとなる。
この坐骨部分周りに接触する箇所を徹底的に優しくする必要がある。
考えられる案としては以下の通り。
- シートクッションを強化する
- 身につけるもので工夫する
- 身体強化
1はクッションを増やす、アンコ詰めを行うなどの対策となる。
2も同様に、アイテムや装備品でバイクではなく自身に対策を施すこととなる、
3に至っては、筋トレしか無い。筋肉が全てを解決する。
ということで3以外の方法を考えてみようか。
筆者は努力が嫌いだ。
他案として、「適度な休憩を取る」が挙げられるが、そういうことじゃねえんだ。
分かるだろ?そういう話じゃないんだよ。
シートクッションを強化
シートクッション強化で一番名高いのは「ゲルザブ」だろう。
バイクの振動やケツ圧を軽減させる特殊な”ゲル”を内包した”座布団”だからゲルザブ。
ただし、筆者の経験上ゲルザブは「ゲルザブ特有の疲れ」が発生する。
上記図で言えばハムストリング部分といえば良いのか、ケツだけでなく太ももにまで圧が分散され、足が全体的に痛くなるという経験をしたことがある。
よってゲルザブは候補から外す。
ここでの代案は「3dエアクッション」だ。
ゲルではなく風船のようなエアクッションを搭載したシートになる。
シート高も硬さも簡単に調節可能、圧も簡単に分散され着座部分を包み込むようなポジションになる。
なるほどゲルザブより面白いかもしれない。試して見る価値はあり。
身につけるもので工夫
ケツにクッションを内包したライディングパンツなどが該当する。
ただライパンのクッションは尾てい骨を保護するためのクッションであり、耐振動や長時間ツーリングに対策されたものではない。
では身につける対策アイテムは無いのだろうか。
いや、存在する。
それはサイクリングパンツだ。
上記リンク画像より察せる通り、あまりにも異形。あまりにも異質。
だがしかし、(その気持ち悪さを差し置いて)効率的なクッションの配置は魅力的な物がある。
デイトナもバイク用ゲルパンツを発売し始めたこともあり注目度は高い。
果たしてバイクにも効果はあるのか。デュエルスタンバイ!
買ってみた
エアシートクッション
今回ご用意したのはこちら。
気持ち悪い!!!
左のクッションを押すとエアが注入できる。
右のクッションを押すとエアが抜ける。
バイクグローブ装着状態でも簡単に調整可能。
横から見ると反っているのがなおキモい。
なおこの反りがシートにフィットするため必要悪の反りとなる。
裏側は滑り止めの細かいラバー加工がされている。
サイクリングパンツ
今回ご用意したのはこちら。
気持ち悪い!!!
裏返さないとこんな感じ。
ちんちんもガードしてくれそう。
意外と肉厚。
坐骨接触部分に一段と大きなクッションが設けられているのが期待を膨らませる。
実践結果
エアシートクッション
正味、ゲルザブより良い感触がある。
空気をMAXまで入れると太ももや金玉まで圧がかかり、1時間程度で色々な所が痛くなり始めるが、空気をMAXから2分の1程度に抜くことでかなり良いクッション感を得ることができる。
少し体重移動をするだけで空気がモコッと内部を移動するため、座ったままで圧が移動する間隔を得ることができる。
ただし完全に痛みを消せるかというとそうではなく、やはり6時間程度で違和感を覚え始める。
無いよりはマシだけど、あっても痛みは完全に消せない。
ただしゲルザブよりは良い、という印象。
サイクリングパンツ
ゲルザブ疲れと似た痛みが発生する。
坐骨の痛みは確かに減るが、それ以外が痛くなる。
ゲルザブでは太ももも痛くなったがサイクリングパンツの場合は金玉の裏側が痛くなる。
その手の用語でいうと「蟻の門渡り」が痛くなる。
肛門から金玉の間に圧迫感が発生する。
見てわかる通り該当部分にもクッションが存在しているため、本来はそれほど接触しない部分にも関わらずこのパンツを装備することで影響が及んでしまっているものと考えられる。
まぁ本来はサイクリング用途であり、サドルからのダメージを軽減するための装備なのだ、このような影響が発生するのは仕方が無いことではある。
合せ技
エアシートクッション+サイクリングパンツの合せ技はどうだ。
完全なケツ保護にご期待ください。
…結果、3時間程度で金玉の裏が痛くなった。
やはりサイクリングパンツのクッションの影響か、普段は痛くならない所が痛くなる。
これならエアシートクッションだけでよい…。
と思いきや、高速道路主体のガチ遠距離ツーではそれなりの効果を発揮した。
どうやらストップアンドゴーとの相性は良くない様子。
街乗りや頻繁な乗り降りを行う場合には悪影響だが、高速道路に何時間も乗るような使い方の場合には、やはり手厚い坐骨保護が功を奏する様子であり大分快適。
用途次第で使い分けるのがおすすめかも知れない。
ただし、ここまでケツ下にクッションを敷きまくっているせいで着座高はかなり高くなる。
ミラーも調整が必要な上ライディングポジションもかなり変わってくる。
アドベンチャーバイクやオフロードバイクの場合はただでさえ着座高が高いので、この装備を備えることで大抵の車を見下ろせるようになる。
高所恐怖症の人にはマジでおすすめできない。
さらに言えば足つきも超絶悪くなるので注意が必要。
足の長さに自信がある場合に限り使用することを推奨する。
座らなければよくね?(真顔)
長時間座ってるから痛くなるんだ。
そうか、座らなければいいんだ。
ということで疲れたらスタンディングすればいい。
筆者バイクはオフロードでは無いがアドベンチャーバイクなのでスタンディングでの走行は全然余裕。
この事に気付いてからは積極的に立って運転している。
市街地だろうが高速道路だろうが知ったこっちゃない。
疲れたら立つ。これ最強。
対向車の視線や通行人の奇異の目が気になるって?
どうせ二度と会うこと無いんだから気にする必要なんてないんだよ。
結論
普段使いはエアシートクッションがおすすめ。
サイクリングパンツは効果薄、場合によっては悪影響。
長距離高速道路ツーリングにはエアシートクッション+サイクリングパンツが効果あり。
ていうか、立って運転すればよくね?
これはあくまで、身長181cm・体重60kg・Vstorm 650 XT乗りの筆者の感想であり、環境に依存する話であることご理解いただければと思う。
また何か新しい発見があり次第、本記事で更新をしていきたく思う所存。
この記事によって誰かのケツの痛みが消えることを願っている。
快適で楽しいツーリングをしようぜ。