筆者はNUARL N6 Proを愛している。
音質、デザイン、操作面において不足無し。
本ブログでもパーフェクトなTWSとしてレビューしている。
しかして時代の流れは早いもので、次々と最新技術が採用された優れたTWSが世に放たれている現状、N6 Proの型落ち感は増していく一方であった。
2022年末、満を持して最新の機能を備えたフラッグシップモデルのNUARL NEXT1が発表された。
筆者は沸き立つ気持ちを抑えつつ、N6 Proを生贄にトレードアップサービスで入手した。
これが今年の初めの話である。
そう、この4ヶ月もの間、レビューを先延ばしにしていたのだ。
というのもこの4ヶ月の間にどうにか本機の良いところを探していた為なのであるが、正直不満点がかなり目につきどうしてもバランスの良い記事に出来ずにいた。
しかしながらもうこれ以上のレビューのしようが無いと判断し、本記事を起こした次第である。
ということで本記事ではNUARL NEXT1をレビューするという体で、NUARL NEXT1に色々文句を言っていこうと思う。
NUARL NEXT1を気に入っている人はブラウザバック推奨。
NUARL NEXT1 の基本データ
NUARL とは
NUARLとは、2016年より日本で設立・展開されたMTI株式会社のオリジナルブランドである。
デザイン・音質・素材・技術のバランスが取れた製品展開をモットーにしているようであり、HPから感じるスタイリッシュなそれがまんまTWSに反映されている面白く個性的なメーカーだ。
知名度も年々上昇しつつあり、品質も相まってオーディオ好きに注目されているブランドでもある。
ちなみにNUARL社は公式Twitterを所持しており、自社製品に関する自語りをかなりの頻度で行っている。
疑問やトラブルに関するリプライにも積極的に応じている様子なので一見の価値はアリ。
NUARL NEXT1 について
執筆時点において、NUARL社のフラッグシップを飾るTWSである。
LDACに対応し、ANCやマルチポイントペアリング、AI通話ノイズキャンセリングなどトレンド機能は勿論のこと、独自のピュアダイレクトイコライザーを使用したフラッグシップモデルらしい性能を備えている。
なかでもこの”ピュアダイレクトイコライザー”が中々に興味深い。
通常のTWSに搭載されているようなイコライザーと異なり、余分なプロセスを省いた音質変更が可能になるとのこと。
ソフトウェア的なEQ変更と異なりドライバ特性そのものにEQを掛けるようなモノと解釈しており、それこそイヤホンを変えたような音質変化を楽しむことができるものであると認識している。
ちなみに本機のスペックを書き出すと以下の通り。
NUARL NEXT1 | |
---|---|
Bluetooth規格 | 5.3 |
ドライバー | 10mm M2 NUARL DRIVER |
対応プロファイル | A2DP,AVRCP,HFP,HSP |
対応コーデック | AAC,SBC,LDAC |
操作方法 | タッチセンサー |
通話用内蔵マイク | 2基 FF ANC/外音取込 兼用 |
防水等級 | IPX4 |
バッテリー容量 | ? |
イヤホン本体の再生時間 | ANC OFF:約7.5時間 (SBC/AAC)/約5.5時間(LDAC) ANC ON:約6時間(SBC/AAC)/約5時間(LDAC) |
充電時間 | イヤホン:約1.5時間 充電ケース:約1.5時間(USB充電時)、約2時間(ワイヤレス充電時) |
合計再生時間 | 20時間(ケース込み) |
充電端子 | USB Type-C |
NUARL NEXT1 の外観
まずは外箱から。
NUARL N6 Proの時から変わらず、あまり高級感は無いデザイン。
3万クラスのTWSであるにも関わらずどシンプルな印象に変化がないのは「そういうブランドイメージ」に起因するものなのかもしれない。
内箱もBLEACH並の白背景。
内蓋を取ると本体登場。
これまたシンプルなデザイン。
ツルッと卵感があり思わず握りたくなる。
内容物はこの通り。
本体とType-Cケーブル、イヤピと説明書。
イヤピにはNUARL Block Ear+が付属。
これ、市販で買えば1700円以上する。太っ腹。
舐め回すように撮影。
上述したように思わず握りしめたくなるデザイン。
エッジが一切存在せず、手のひらにちょうどよい大きさであるフィット感がハンパじゃない。
背面には無線充電可能であることを示すアイコンが確認できる。
開けたところ。
カッコイー!
白と金のみで配色されており、ここでもまたエッジが一切存在しないデザインが好印象。
ケース本体に金で刻印された「NEXT1」もまたラグジュアリー感を演出している。
ウィング部もシリコンで形成されたものであるが、筐体そのものと調和が取れておりデザイン面においては違和感を感じづらい印象がある。
真っ白すぎてわかりにくい。
今更ながら白背景で撮影しなきゃよかったと後悔しているが、物撮りレンズが壊れている現状、撮り貯め写真でしか記事が起こせない。許して。
形状としてはNUARL N6 Proに近いコンパクトでモダンな印象ではあるが、ステムについては独特な角度が設けられており、NUARL N6 Proより耳道への進入角が浅い。
これが中々に厄介。理由は後述する。
体重測定。
本体込みのケース重量は55.6g、本体は5.5gという測定結果。
NUARL N6 Proよりも軽量であることがわかる。
NUARL NEXT1 の良いところ
大変優秀な音質と変幻自在なEQ
本機の解像度はとても優れた物がある。
数万円クラスの有線イヤホンに匹敵する高解像度と臨場感を有しており、高音域から低音域に通じてバランス感が非常に高い。
NUARL N6 Proにあった高音域の伸びの良さは本機でも感じれるところであり、「筆者が求めるNUARLらしさ」を十分に味わうことができた。
そして何より、本機のウリであるピュアダイレクトイコライザーが大変に面白く優秀。
自分好みの音質に変幻自在であるため、これひとつで様々な音質傾向を楽しむ事ができる。
カスタムEQも5通り保存できるため、ドンシャリやモニターライクの設定を保持しておけばその日の気分によって”イヤホンを変えることなく音質を切り替えて楽しむ”ことができる。
なお基本出力が「低音が若干強めのニュートラル」であるため、低音を抑え気味にEQをグリグリするとよりフラットな表現が可能となるのでおすすめ。
本機そのものの基本スペックが優れているため、結構無謀なEQ設定をしても破綻しないのがまた面白さを助長させている。
汎用性が高く、面白み/個性のあるTWSと言えるだろう。
アンビエントサウンドモードがすごい
まるでイヤホンをしていないと思うレベルで外の音が聞こえる。
なのにこちらの発声は耳栓をしている時のような内側で反響(骨伝導)するような音で聞こえてくる。
「イヤホンをしているのにイヤホンをしていない感覚」という、なんとも筆舌にし難い不思議な感覚を味わうことができる。
ホワイトノイズも抑え気味であり、勿論この状態で音楽を流しても音の破綻は起こらない。
大変優秀。
匂いが良い
イヤホンのレビューで何気持ち悪いことを…という話なのだが、語らせてくれ。
新しいスマホやPCを開封した時に漂う、新品のプラスチックが有する香りというべきか、特殊塗装の塗料の香りというべきか、あの独特な「匂い」は誰もがどこかで感じたことがあるハズ。
それが本機ではずっと香っている。
3ヶ月たった今も新品ガジェットの匂いがする。
全然匂いが減衰しない。特にケース。
この調子なら一年以上は香ってくれると思う。
わかる人にはわかるこのテンションの上がる要素は、言ってしまえばシンナー中毒者のソレに通じるものであるしフェチズムの一種であるのかもしれないが、絶対理解できる人はいるはず。
これは圧倒的ポジ要素なので良いところとして挙げさせていただく。
NUARL NEXT1 の残念なところ
装着感が最悪
本機は上述した通り、ステムの設置角度がかなり独特だ。
本体に対し強く斜めに設置されているものであり、それに伴って耳道への侵入が浅くなりがち。
何よりもステム自体が短く、かなり人を選ぶ形状となっている。
また悪いことに本機はそのような特徴を持ちながら、ステム設置方向に対し充電部や操作センサー部の格納をするために筐体が伸びていることから、一定の角度から耳道への侵入を阻む設計となっている。
このことからより一層「浅い」装着感となり、人によっては全く密着感が得られない。
筆者は手持ちのTWS用イヤピを全て試してみたが、そのどれもで装着感が得られず常に浮いた状態となっている。
TWS用ではない有線イヤホン用のイヤピをつけて、それも他イヤピに比べて標高の高いSpinFit W1を装着してようやくまとも、というレベルである。
どれだけ本機のノズルの角度が浅く、耳道への装着がゆるい設計なのか、と疑問に思わざるを得ない。
とは言え、イヤホンの形状の合う合わないは千差万別十人十色。
筆者が合わなかっただけ…という話かと思いきや、出るわ出るわ「装着感が浅い」というレビュー。
Amazonレビューや価格ドットコムでも頻繁に見かけるものであり、本機の形状には何らかの欠陥があるのではないかと邪推してしまう。
本機の設計に関し以下のように切磋琢磨を繰り返した結果とあるが、これでNUARL N6 Proには少なかった装着感への違和感の報告が多い現状は、はっきり言って問題があると思う。
本機の購入を検討している人は、必ず実機での試聴を行うようにしよう。
脳死ネット購入はマジでおすすめできない。
ANCの性能が最悪
ANCが最悪。
全然ノイズキャンセリングされないうえ、音にも悪影響が発生する。
厳密に言えば、ANCをONにすることで本当に若干にビミョーにある程度のノイキャンは作動する。
が、ソレ以上に高音域の出力が丸められ奥行きが無くなるといった出力傾向に切り替わる。
薄い膜を一枚、と言うよりは布一枚を挟んだようなとんでもない違和感がある。
ANCのパターンは3種類用意されているが、そのどれもで音質が変化し、それでいて肝心のANCの性能はどれも超微妙。
音質を犠牲にしてANCの効きを高めるTWSにはいくつか出会ってきたけれど、本機に至っては音質を犠牲にして何も得られない。
こんなレベルの品質なのであればANCをONにする意味が無い。
正直言って3万円クラスでこの品質はゴミ以外の何者でもない。
ちなみに筆者利用機器はアンビエントサウンドモードの機能に初期不良があり、交換対応をしてもらっている。
ということは筆者利用機器は「公式が正常な動作保証をした機器」であり、筆者環境特有の品質ではないと判断することができる。
つまり、本機のANCの性能はこれがデフォルトということだ。
操作感が最悪
本機は側面にタッチセンサーを備えているのだが、判定があまりにもシビアすぎる。
音楽を停止しようとしてダブルタップした際、シングルタップ認定され音量が下がる/上がるという挙動が起こるのは日常茶飯事。
ダブルタップでの再生停止は勿論のこと、トリプルタップによるアンビエントサウンドモード/ANCモードの切り替えはかなりの難易度がある。
というかそもそもの話として、どこがセンサー部なのかがわからない。
2023/4/1
この記事を公開して数時間後に公式Twitterが以下を投稿している。
なんかすみません。
でもやっぱり使いづらいっす。
これ、いままで使用してきた安価などんな中華TWSよりも悪質であり本当にストレスが貯まる。
本機オンリーでの操作は諦めてスマホで直に操作したほうが良いまである。
NUARL N6 Proの物理キーは…本当に良かったなぁ…。
アプリの表示が意味不明
この画像から確認できる通り、ANCや外音取り込み(アンビエントサウンドモード)のモードの内容がまるで意味不明。
「モード*」のみの記載であり、どういった仕様がありどのような用途で使用することを想定・推奨としているのかがまるでわからない。
ただまぁ、本機は結局上述したような残念なANC品質なので基本はオフを推奨したいところ。
上記Twitterのように公式も対処が必要と認識しているようなので今後何らかの変化がありそうだが、現状改善は見受けられず。
せめてアプリの説明の変更はなくとも、公式で「このモードはこう」と説明が欲しいところだ。
NUARL NEXT1 の総評
ということで、筆者はかなりショックを受けている。
NUARL NEXT1は、試作品のレベルだ。
まだまだ改善すべき箇所/改善できる箇所があるはずだ。
なぜこの状態で出してしまったのか、もったいない。
基本的な操作や装着感に問題を抱えているため、積極的に利用したいとは思えない。
3万円クラスでこの品質は正直言って微妙と評価せざるを得ない。
音質は大変に良く、優れたEQを搭載していることについては絶賛したく思うが、他があまりにも残念。
トレードアップしたNUARL N6 Proを返してくれ、というのが正直な気持ちである。