筆者はMOONDROP KATOを大変に愛用している。
本体が傷つきやすいという点に目を瞑れば、価格性能共に優秀なイヤホンだ。
で、後継機っぽいのが出たらしいとのことで、発売日に即購入。
そしてまた一ヶ月経っちゃった。
旬を過ぎてから記事を出すのは最早本ブログの伝統芸ですな。
ということで MOONDROP Kadenz のレビューをしていく。
MOONDROP Kadenz の基本データ
水月雨(MOONDROP) について
水月雨(MOONDROP)は中国(おそらく深セン)を拠点とした、2015年に設立されたオーディオブランドだ。
1万円程度のものから10万円近いものまで、多種多様なイヤホンを展開している。
年々着実に技術力を増しており、それに比例して知名度と信頼を増している堅実なメーカー。
その甲斐もあって今では有力な高級イヤホン・ヘッドフォンメーカーの一員となっている。
以降はMOONDROP Ariaの記事と同じになるので省略。
MOONDROP Kadenz について
MOONDROP Kadenz は、2024年10月に発売された1DDイヤホンとなる。
MOONDROP KATOがMOONDROP KXXSの進化版という位置付けであるように、本機はMOONDROP KATOの進化版という位置付けになる、と思う。
ちなみにMOONDROP KATOのようなオモシロストーリーはない様子。
うーん残念。
本機はKATOと同様に10mm ULT10mm ULT(Ultra-Linear-Technology)超線形ダイナミックドライバーが搭載されている。
が、このドライバーは第2世代に進化しているとのことで、TAC ダイヤモンドコーティングドーム複合振動板素材が採用されているという。
加えて、新開発の不規則磁気回路を備えており、出力信号の歪みが非常に少ないクリーンで拡張されたサウンドレスポンスを保証しているとのこと。
筐体はステンレススチールで形成されており、KATOの欠点である傷つきやすさをカバーしつつ手触りと質感の向上を果たしている。
その他、高純度の単結晶銅銀メッキケーブルが付属。
4.4mmプラグを標準採用し、同じ素材のケーブルを使用した 4.4mm→3.5mmアダプターまで付属している。
更に32ビット/384kHz PCM出力に対応したUSBDACまで付属しているというトンデモ仕様。
人気モデル故か、MOONDROP社の気合の入れようが伺える。
MOONDROP Kadenz の外観
まずは外箱。大きさやはKATOと同じ。
背面の情報が若干多い。
これが「Kadenz」ちゃんですか。
逆光浴びてるので髪色が不明だが、多分水月友希の姉貴。
なんかカーテンコールを受けている様子。
おで知ってる。
この後狙撃されるんでしょう?
おでこういうシーン詳しい。
内箱。やっぱり観音開き。
ご開帳、からの内蓋。
ここもKATOと一緒だけど蓋の構造がリッチになってますな。
内蓋を取ると見慣れた収納様式。
角ばってる。
新型のKATOの形状に近いのかな?旧型KATOしか持ってないからわからん。
内容物は上記の通り。
事前説明の通りとっても潤沢。
ただしKATOにあったようなポストカードが入っていない。(半ギレ
法廷で会おう。
ケースは円柱に変更。
質感は良い。
中にはケーブル。
太くてコシのある良質なケーブル。
標準4.4mmでオタク向け。
3.5mm変換プラグとUSBDAC。
シンプルなデザインであるが、実機を触ってみると安っぽさはなくかなりしっかりしている。
USBDACの裏面。
これは…AMP機能があるってことじゃな?
Type-Cコネクタがあれば何でも使えるっぽい。
イヤピケースもある。
Spring Tips(清泉)とBlack Tipsのイヤピが付属。
小さい巾着の中には交換ノズルが入っている。
このノズルは長さが異なっており、個人の耳に合わせて付け替えるものとなる。
よく見るとノズルにアルファベットの記載が確認できる。
Bが無いということはデフォルトは中間サイズのBを装着しているのでしょう。
ちなみにA/B/Cでどのような音変更になるかの図や説明はないので、音の変更自体は無いと思われる。
形状の基本はKATO。
KATOをローポリにした感じ、と表現すれば良いか…。
もっとも、新型KATOの裏面はもとからこんな感じなので違いは無いと思われ。
フェイスプレートも合わせて角張った感じなんでしょうかね。
体重測定。12.5gを計測。
重すぎ♥ドングルDACかよ♥それともベーゴマ?♥
そんな重くて恥ずかしくないの?♥ざぁーこ♥♥
と煽りつつも、実は同社製品のSTELLARISのほうが重い。
13.9gのMOONDROP STELLARIS、恐ろしい子。
MOONDROP Kadenz の良いところ
KATOから解像度、低音の締まりアップ
あらかじめお伝えしておくと、本機はKATOからの劇的な変化というのは無い。
順当なレベルアップ版、という印象であり、強くKATOの傾向を受け継ぐ印象がある。
KXXSからKATOの遷移で感じたような衝撃や感動、爆発感は本機では感じることはできない。
そんな前提を踏まえていただいたうえでもお伝えしたいのは、より明瞭となった解像度だ。
KATOのバランスの良さと音圧の”ふくよかさ”は継承しつつ、一つ一つの音の立ちが鋭く伸びが良いために余韻がより残りやすくなっており、またその余韻が心地よい。
分離感が向上したことにより臨場感も向上しており、より生々しくリアリティのあるサウンドを浴びることができる。
また、KATOよりも低音が響く印象がある。
これは低音が強くなったという表現よりも、上述した解像度の向上に付随して低音の粒立ちが良くなり、全体のバランスとして引き締まった故の印象という”きらい”があるように思える。
という感じに、より聴きやすくダイナミックになったという印象がある本機ではあるが、「ではKATOより優れているか」というと少し微妙なところ。
筆者的には、KATOとの差はケーブルやイヤピで補強できそうなレベル感であり、明確な優位性を保証するようなものではない、という結論ではある。
とはいえ、デフォルトでこの音が出るなら十分なものではあるのだが。
オプション品の品質の高さ
まさか32ビット/384kHz PCM出力に対応したUSBDACが付属してくるとは驚きですよ。
勿論MOONDROP LINKとの連携も可能であり、より細かなチューニングが可能となっている。
その他、ケーブルもイヤピも単独製品として成り立つレベル(実際単独で売ってる)であり、オプション品にしては非常に、否異常に品質が良く満足度が高い。
本機をオーデオスターターキットとして使ってくれ、と言わんばかりの充実感。
うーんすごい。
本体の強度が向上
KATOで唯一、気に食わなかった傷つきやすさが改善されている。
全面鏡面加工が無くなり、ステンレススチールでマットに仕上げられた本体は、大分に堅牢感が増されている。
上述ではローポリライクな装飾と揶揄したものであるが、曲面が少なく設計されていることに起因し、鋭角なものに対する傷の付きやすさ(傷の深さ)が軽減されている。
故に深く傷が入ることは無く、また表面のマット加工も相まって傷が目立たなくなり(そもスチールなので硬い)、その造形美が保たれやすくなっている。
いいゾ~コレ。
MOONDROP Kadenz の残念なところ
MOONDROP KATO の残念なところが無くなっちゃったから無し。
強いて言うならKXXS→KATOのような感動は無いってところかしら。
まぁKATOとの差別化がデキているってことで。
MOONDROP Kadenz の総評
より聴きやすくなったMOONDROP KATO。
MOONDROP KATOは2019年に発売されていることを鑑みると順当な進化と言えるだろう。
5年の歳月を経て会得した”より優れた技術の採用”と、今の時代に相応しい”付属品の網羅”、そして時代に合う”音色の最適化”が施されたKATOと評価することができる。
MOONDROPという企業が如何にオーディオと真剣に向きあって来たのかを体感することができる宝珠のイヤホンであると感じた。
一方で、音質面においてはKATOから劇的な変化は無い印象がある。
まぁ確実に良くなってはいるが、上述したようにアイテムでKATOをKadenzに近づけることは可能。
ということでKATOを持っているなら無理に入手しなくても良いんじゃないかな。
ただ、総合点ではやはりKadenzが上。
入手できる機会があれば、是非とも積極的に狙っていこう。