
実は本機(NuraTrue Pro)の発売当初から気になっていたこの機種。
なんやかんやあって何故かDENONから展開される事になり、おま国価格の5万円クラスで展開。
なんだか不穏だなあと思って眺めていたところ、案の定価格が暴騰し2万円程度の今に至るという不穏な経緯を持つ。
更には中古市場では1.7万円程度で入手可能という、最早エントリークラスの価格で展開されている現状。
なんて不憫なイヤホンなんや…私、気になります。
ということで今回はそんな DENON PerL Pro についてレビューしていく。
DENON PerL Pro の基本データ
DENON について

DENONとは株式会社ディーアンドエムホールディングスが展開する日本のブランドだ。
彼の”玉音放送”を録音したデバイスもこの会社、というぐらいの超老舗オーディオメーカーである。
――ちなみに、みなさまに知っておいていただきたい事実がございます。
日本は敗けておりません。まことでござます。
一世紀以上も存在していればそりゃあ紆余曲折あるわけで、この会社かなりの遍歴を辿っている様子。
ここで要約できないぐらいのアレコレがあるので、もうwikiや本社の歴史表を見てくれというレベル。
ちなみに筆者はお小遣いを貯めて初めて購入したコンポがDENON。
そして2025年今も尚現役。詳細は以下。
DENON PerL Pro について

DENON PerL Proは、2023年7月に発売されたTWSだ。
前述したように、本機の元となる「NuraTrue Pro」を出していたnuraを親会社のMasimoが買収し、それをベースにしたものをDENONブランドから出したのがこのDENON PerL Proとなる。
スペックは以下の通り。
DENON PerL Pro | |
---|---|
Bluetooth規格 | 5.3 |
再生周波数範囲 | 20 Hz–40 kHz |
対応プロファイル | A2DP/AVRCP/HFP/HSP |
対応コーデック | SBC/AAC/aptX/aptX Adaptive/aptX Lossless |
操作方法 | タッチ |
ドライバー | 10 mm |
防水等級 | IPX4 |
バッテリー容量 | 非公開 |
充電時間(ケース/イヤホン) | 約2時間/約1時間 |
連続使用時間(ケース/イヤホン) | 約24時間/約8時間 |
充電端子 | USB Type-C/ワイヤレス充電(充電器別売) |
その他 | Masimo Adaptive Acoustic Technology(AAT) 適応型ハイブリッド・ノイズキャンセリング |
医療技術を応用した「MasimoAAT」というパーソナライズ機能を持ち、専用アプリから信号音を再生するだけで全自動で計測と設定が可能というステキ機能を有している。
なんでも、”聞こえる/聞こえないといったリアクションを示せない新生児の聴力を測定するため”に使用するような技術であり、耳の入り口から鼓膜までの“外耳”、鼓膜付近の“中耳”、鼓膜より奥の“内耳”の3つのエリアを測定し、ユーザに最適化した出力に調整できるとのこと。
更には5バンドのイコライザーも搭載、自動調整したサウンドを好みで微調整できる。
コーデックはaptX Lossless/aptX Adaptive(96kHz/24bit)Snapdragon Sound対応に加え、aptX、AAC、SBCに対応。
5分間の充電で1時間の再生が可能という、効率的な充電機構まで持つ、正にフラグシップモデルと銘打つに相応しいイヤホン。
発売当初は5万円超えであったが、2024年9月に半額以下の2.2万円に暴落。
現在に至るまでこの価格が続き、最早定価として落ち着いている様子。
後継機種が出るための在庫売りつくし等の噂もたったが、半年以上経過した現在もそのような公式情報は無くしずしずと展開されている。
普通に売れ行きがよくなかったんだろうなぁ、と杞憂せざるを得ないところである。
DENON PerL Pro の外観


まずは外箱。
高級感はない吊り下げ式の箱。
2万クラスの現状価格では価格相応、これで5万円クラスで展開されてたと言われると、ちょっと…。

外箱を取ると内箱。

開けるとケースが登場。


ケーズ下部の黒い箱にはオプションが付属。
充電ケーブルとイヤピ、ウイングとウレタン式のイヤピも内包。


ケースは作りがしっかりしており、開閉の重さがしっかりしている印象がある。
WF-1000XM4に質感が似ている。


ケース内部は大きく抉られており、ある程度の軸長イヤピを装着しても許容してくれる。
多くのTWSのケースは浅く作られているため選択肢が狭いが、本機であればTWS用以外のイヤピを装着しても収納が可能となる。
これは嬉しいポイント…というか必然であるのだが。理由は後述。


本体はかなり個性的な形状。
円盤状の操作筐体に装着部がニョキッっと生えている。


装着面には様々なセンサーが確認できる。
着脱センサーの他、ノイキャンのホール、充電端子を視認。
ノズル内部にも何かが確認できており、これがMasimoAATのソレなんだと思う。

イヤホン込のケース重量は69.5gを計測。

イヤホン本体の重量は8.1gを計測。
TWSにしては重いほう。
DENON PerL Pro の良いところ
メリハリのある良音

そんじょそこらの有線イヤホンを凌駕する音質。
まずはじめに、引き締まってよく響く低音が魅力的。
まるでスピーカーから聴いているようなズシンと響くしっかりと重みのある低域を感じることができる。
他音域を侵食するような強さもなく、しっかりと心地よい出力にとどまっており大変にバランスが良い。
迫力も十分にあり、音声/映像を問わず原音の魅力を引き出す優れたクオリティを有しており汎用性が高いと感じた。
中域は極めて伸びが良く大変に聴きやすい。
ボーカルは前面でも後面でもなく中央に立っており、ホール感があり立体感を感じることができる。
高域は少々控えめであるが不足は無く、中央の位置から後方へ抜けていく響きを感じることができる。
TWSの中では感じたことの無い奥行きや臨場感を垣間見ることができる圧巻のクオリティがある。
自分の経験上、2万円クラスの有線イヤホンでもこのクオリティには届いていないのがざらにあると感じているのだが、まさかそれを無線で出してくるとは…と驚き。
なるほど、巷の評判が良いのも納得の完成度だ。
ノイキャン、外音取込みも及第点に機能する

ノイキャン、外音取込み(ソーシャルモード)共に、最低限の動作を問題なくしてくれる。
ホワイトノイズが入ったり高価が薄かったりというのがありがちなこれら機能であるが、両機能ともに必要最低限のレベルで稼働してくれている。
まぁこういうのはオマケと筆者は認識しているので過度な期待はしていない。
その期待を満たすレベルということでひとつ。
DENON PerL Pro の残念なところ
装着感がバチクソに悪い

まぁ見ての通りという話。
こんな異形なので当然装着感は最悪。
円盤はともかく装着面は普通じゃん?と思うことなかれ、耳介にふれる箇所まで何故か完全な円形、且つカバーには奇妙な突起が施されており、以外とクセが強い。
円盤はともかく、このカバーの突起がマジで曲者。
上記の通りこのカバーは着脱可能であり、ウイング付きも付属している。
これらを組み合わせて個人に合わせた環境を構築していくのだが、恐らく全ユーザがこの形状と突起にかなりの四苦八苦を有することうけあい。
この前代未聞のクソデカUFOな形状と、それに伴った浅い円柱からの装着部というのはとても扱いしづらい。
しかもノズル部も横幅があり且つ太めに設けられているため、装着できるイヤピが限られてくる。
TWS用のイヤピでは背が足りなかったりするため、有線用イヤピを試す必要も出てくる。
そのためにケース内のバッファが設けられているのね、と納得。
結果として筆者の使用環境では、左が「長ウイング/AZLA SednaEarfit MAX M」右が「ウイング無し/AZLA SednaEarfit MAX L」という超歪な構成で落ち着いた。以下参照。
この構成に至るまでに一週間毎日あーだこーだといじくり続けた。
自分の耳に合わせてウイングとイヤピを変え続ける途方もない作業が発生するため、正直面倒くさいことこの上ない。
耳が小さい人だと恐らく倍以上の苦労があると思う。

パーソナライズイコライジング機能への違和感
上記画像の通り、このイヤホンでは個人に合わせたイコライズをしてくれる。
MasimoAATを利用した計測が行われ、計測中は「ピロピロピロ…」という如何にもな”サイバネティックっぽい音”で楽しませてくれる。
最適化した音色は大変に色鮮やかで瑞々しい音色に仕上がってくる。
この機能は大変に素晴らしい。素晴らしいのだが…
パーソナライズイコライジングしていない音(ニュートラル)が結構酷い。
パーソナライズイコライジングの機能を如実に感じさせるために、あえて雑な音色に整えられているのでは、と疑うレベルでくぐもっている。
ぶっちゃけこのパーソナライズイコライジング機能が無い音で聞かされたら1万円以下クラスの品質と言わざるを得ない。
紛いなりにも2万円クラスで、素の音質でコレ、と言われたらちょっと戸惑うレベル。
真実はどうであれ、本機はパーソナライズ機能の使用が必須ということだ。
DENON PerL Pro の総評

音質も機能も良いけど、少々の違和感あり。
正直、2万円という今の価格が妥当かと。
音質は大変に満足だが、その満足感を得られるためにはかなりの試行錯誤が必要。
しかもなんか素の音の作り方がちょっと雑に仕上げられているような気がして不信感がすごい。
これが5万円クラスで売られていたと思うと…うーん。
まぁ2万クラスで考えると大変に良質で買いな製品。
市場は正直なんだなってハッキリわかんだね。