【MOONDROP VARIATIONS レビュー】良いけどMOONDROP感がない。イヤーピースが超重要。

4.5
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オーディオファンなら知る人ぞ知る、あの水月雨(MOONDROP)。
何故かパッケージに二次元美少女が誂えられた例のアレ。

筆者好みの音質傾向であるがゆえ、興味が尽きない。
どんどん同社製品が家に増えてくる。誰か助けてくれ。

例のアレ
「例のアレ」の記事一覧です。

という導入で始まるいつものアレであり、結局ベタボメにっこりで終わるMOONDROPイヤホンなのではあるが、今回はタイトルからも察せられる通りにどうにも旗色が違う。

本機に関しては実は今年の4月には入手しており、その評価の付け辛さに今の今までレビューを保留していたりした。
そんな甲乙つけがたいイヤホンであるMOONDROP VARIATIONSについてレビューしていこうと思う。

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MOONDROP VARIATIONS の基本データ

水月雨(MOONDROP) について

水月雨(MOONDROP)は中国(おそらく深セン)を拠点とした、2015年に設立されたオーディオブランドだ。
1万円程度のものから10万円近いものまで、多種多様なイヤホンを展開している。

年々着実に技術力を増しており、それに比例して知名度と信頼を増している堅実なメーカー。
その甲斐もあって今では有力な高級イヤホン・ヘッドフォンメーカーの一員となっている。

以降はMOONDROP Ariaの記事と同じになるので省略。

MOONDROP VARIATIONS について

MOONDROP VARIATIONSとは2021年に発売されたハイブリットドライバイヤホンである。
「1DD+2BA+2EST」の5ドライバを搭載しており、低域には「10mm LCP液晶ポリマーDD」を1基、中音域にはオリジナルBAドライバの「Softears D-MID-B」を2基、高域用に「Sonon製のデュアル静電ドライバ」の計3種類のドライバを搭載している。

異なるドライバの配分をほぼ均等に配置しているのは中々面白い。
DDはAriaにも搭載されているLCP(Liquid Crystal Polymer)DDなので、それだけでも十分な信頼がある。

市場価格5万円以上という、MOONDROP製品としてはそれなりに高価な方であり、カタログスペック・品質に関しては折り紙付き。
高音域から低音域までバランスよく出力することに注力しているようで、公開されている各計測値ではそれらを示すグラフが多く見受けられる。

本体としてはこれまで触ってきたMOONDROP製品とは異なり金属製ではなく、フェイスプレートはステンレス、筐体は樹脂素材となっている。
そのため「ずしり、ひんやり」は感じないが、加工の精度がかなり高いために不思議と安っぽさは感じることがない良い塩梅となっている。

MOONDROP VARIATIONS の外観

外箱から。
これがVARIATIONSちゃんですか。
個人的に一番シコい。なんかすごい既視感を感じる。

裏面。
いつもの音響特性についての記載。
ドライバ構成について概要記載は見受けられない。

内箱。どっからどうみても匣。
イヤホンの箱として今まで見たことがないぐらいの魍魎の匣。
ああ、生きてゐる。

高級時計のような内装。ただしラグジュアリー感は無い。
ケースはフェイクレザーではあるがかなりしっかりした作り。
まぁそこらの時計よりは高い代物だし当然か。

上の封筒には説明書やらポストカードやらなんやらが封入。

その下からは本体が登場。
うーん美しい。

なんかすごいエッチみを感じる。
ふくよかでなだらかな曲線、薄く透けて見える内部構造と引き締まったフェイスプレートの対比がこの上なくエッチ。

H・R・ギーガーのテイストをどことなく感じるデザインであり、バイオメカニカルと評するにふさわしい造形だとは思わないか。
1枚目、3枚目、5枚目の写真で確認できる「透け」感があまりに絶妙だと思わないか。
このスモーク具合最高だな、タイツで言えば60Dぐらいかな、すごく好きだ。

写真いっぱい撮っちゃった。

ステムはこんな感じで返しが無い。
ダンパー部分が丸見えになっている。結構特徴的。

付属ケーブルのプラグはまさかのカートリッジ式。
2.5から4.4まで選択可能。さすがの高価モデルだ。

体重測定。8.7gを計測。
全体金属のKATOなどとはやっぱり雲泥の差。

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MOONDROP VARIATIONS の良いところ

圧倒的な解像度と安定の高音域

本機の魅力は何と言っても解像度である。
「どんな音」が「どこで」鳴っているかを明確に再現し、圧倒的な情報量が押し寄せてくる。
安価な多ドラ機器でありがちな情報量パワーで押し切るわけではなく、各音域のバランスが大変良く調整されていることから、聴き疲れすることがなく長時間に渡りリスニングを楽しむ事ができる。

高音域に至ってはMOONDROPおなじみの音質が再現されており、明瞭かつ高分離高解像度で気持ちが良い伸びを味わうことができる。
音割れ、ピーク切れ、サ行の刺さりなんてものは当然感じること無く、ピアノ曲や女性ボーカルを楽しむことができる。
硬質さはあまりなくおだやかな傾向にあるので、クラシックやジャズ、ポップスなどと大変相性が良い。

まさに「きらびやか」という表現を使うにふさわしく、音楽をより一層楽しむことができるだろう。

付属品が充実

見ての通り付属品がとんでもなく充実している。
イヤホン初心者も本機を購入しておけば大体の環境に適応することができる。
この充実っぷりは納得の価格帯モデル故といったところか。

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MOONDROP VARIATIONS の残念なところ

MOONDROP的な音じゃない

本機は上述したように、圧倒的な解像度とMOONDROPとして安定の高音域出力に長けた製品である。
が、しかし、本機はあまりにも低音域が強すぎる。

その低音域というのも「下品なドンシャリ」というものでなく、金属みを抑えた奥行きのある出力傾向ではあるのだが、あまりにもブーミーなのである。

例として、MOONDROP製品が得意なアニソンを挙げてみる。
打ち込みのバスがすっごい震えて全体のバランスがかなり破綻している。
なんというか、KBEAR製品で感じる、不必要な自己主張を感じる。

今までのMOONDROP製品は「女性ボーカルをメインに置き、他はあくまで演奏隊」という認識を確固としており、リズム隊は後方にいて引き立て役に徹してくれていたように思える。
がしかし、本機ではリズム隊がすごく出張ってくる。
「耳に痛い」という程ではないが、耳につく。絡んでくる。

お前じゃない、こっち見んな、なんでドラム叩きながら笑いかけてくんだよ。
え、なんでベース引きながら肩組んでくんだよ、やめてよステージ戻ってよ、という具合。

低音域のアタック感と力強さが、これまでのMOONDROP製品とは全く異なるのだ。

籠もって聞こえるとか、耳に刺さるとか、不快な音圧とか、そういうものは全く無い。
前述したように高い解像度を保持し、別の音場で鳴ってくれているのでバランスを壊すほどではない。
がしかし、これまでの「MOONDROP的な音」を求めていた人にとっては少し居心地が異なる。

これら問題点はイヤピを変更することで改善可能。
筆者環境では以下イヤピに換装することで大幅に改善することができた。

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MOONDROP VARIATIONS の総評

とても高音質、高品質。最強、完璧。でもちょっと違う。

恐らく筆者のように、MOONDROP製品を集めて聴き比べているような残念な人でなければ、とても満足できるものだとは思う。
だがしかし、これまでいくつかのMOONDROP製品を購入し、愛用し、そのレベルアップとして本機を購入するような場合においては拍子抜けするかもしれない。

本機は5万円以上とイヤホンとしてはそれなりな部類であるため、たとえ好みではない音だとしてもどうにか納得できるような着地点を見つけたくなってしまいグダグダと所持し続けてしまうかもしれない。
筆者がまさにそれであり、ぶっちゃけ好みで言えばKATOのほうが上。

本機の値段はKATOを2台は買える価格差となっている。
イヤホンは価格だけが全てではない、ということに改めて気付かされた体験であった。
これだからイヤホン巡りはやめられないんだよな。

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