注目のTANCHJIMの新機種だ。
かなり気難しい機種だったので、入手から少し時間を要しての記事起こしとなる。
ということで今回はTANCHJIM KARAをレビューしていこうと思う。
TANCHJIM KARA の基本データ
TANCHJIM について
TANCHJIMは中国(おそらく深セン)を拠点とした、2015年~17年頃に設立されたオーディオブランドだ。
兎にも角にもブランドキャラの浅野てんきちゃんが可愛い。
詳細はTANCHJIM OLAの記事を参照して欲しい。
TANCHJIM KARA について
TANCHJIM KARAは、2023年6月に発売された1DD+4BAイヤホンである。
“フラッグシップ構成”と見かけるものであるが、お値段は日本円で2.5万クラス。
TANCHJIM PRISMなる最上位機種(6万円)が存在するため、価格的には実質フラッグシップ機ではない。
とはいえ、TANCHJIM PRISMが1DD+2BAなのでドライバ構成という点では本機が上回っており、且つ2021年発売のPRISMから格段の技術進歩が見込めるため、もしかしたらもしかするかもしれない、というなんとも絶妙な立ち位置の機種となる。
仮に性能までフラッグシップ級であれば、TANCHJIM PRISMの存在価値がまるで失われるのでそんなことはないと思うが。
海外での宣伝具合は中々に気合が入っているものであるが、こと日本展開においては現状あまりそのようには見えない。
日本国内での発売から1ヶ月以上経過するがレビューは圧倒的に少なく、2023年7月現在、ほぼ確認できていない現状。
ちなみにAmazonの製品説明が大分イカれており、以下のようなすっとこどっこいな表現が確認できる。
- 安心してお買い求めください。 予想外の見栄えが良く、確かに甘い音です。
- 「音を出さずにユニットスタッキング」を拒否します。
- よりスムーズな超高周波サウンド、素晴らしい低周波サウンド、ドライコールドサウンドがないことが特徴です。
- 小さな空洞ですが、内部に宇宙があります。
上記のような適当具合、且つAmazon以外のネット記事でも広告は見受けられないことから、あまり日本国内展開は本腰ではないのかも?
と、思いきや以下のようにブランドとしての店頭広告は力を入れている。
な…何考えてんのか…わかんないにょ…。
ちなみに弊ブログにおけるTANCHJIM製品は、検索上位に位置するにも関わらずかなり流入数が少ない。
知る人ぞ知る、というブランドなのだろうなぁという印象がある。
TANCHJIM KARA の外観
まずはいつもの通り外箱から。
なにか他のモノが後ろに見える見える…。
裏面はこのように。
TANCHJIM OLAとほぼ同じデザイン。
ハーマンカーブがなんだか特徴的。
TANCHJIM NEW HANAと同様、ポストカードが付属。
これがKARAちゃん…いや、浅野てんきちゃんですか。
なんですか、その眼は。「オタクキッモ」とか思ってんすか。
そんな眼で見つめないでほしいですね。
なんすか…やめてほしいっす…見ないで…頼む…!!
あっ…!!あーっ……!!!
…ふぅ。
さて、内箱。
箱の四隅がボコボコ。
AliExpressの愛が今回も強め。
開けるとこんな感じ。
内蓋には説明書が封入されている。
全部取っ払うとイヤピとケースが出てくる。
ここまでの構成はTANCHJIM NEW HANAと全く同じ。
それ以外のデザイン面もTANCHJIM製品として統一されており、TANCHJIMファンには刺さる物がある。
そして何より、この付属イヤピがすごい良い。
理由は後述。
ケースはかなり品質が良い。
硬さや大きさ、しなやかさやデザインにおいて不足がない。
イヤホンケースにしておくにはもったいないレベル。
ケース内にはケーブルが入っている。
ペラフニャ感は無くしっかりとしており、おまけ感は無い。
本体。
か…かっこええ。
フェイスプレートやレジンには金属は使われていないが、統一されてレジン加工がされており全体の印象は悪くない。
本体上部にベントホールが設けられており、そこにある網目加工がワンポイントとして映えてる。
フェイスにある基盤を確認できるクリア部分は硬めのレジンが張られておりむき出しではない。
魅せるところは見せる、ガジェ欲を満たすデザインになっている。
MOONDROP VARIATIONSや、Truthear HEXAのような、ドライバ毎のサウンドホールが設けられている。
ステム部分のくぼみも無く、イヤピの引っかかり部分が無いところも共通している。
重さは4.3gを計測。
金属筐体を有しない故の軽さか。
TANCHJIM KARA の良いところ
優れた筐体美
まず何につけてもコレ。
本機は筐体が大変によろしく美しくかっこいい。
フェイス部分の小窓から伺える基盤はもはやエロいまである。
ギッチリミチミチに詰まったドライバ群、と、それを繋ぐ配線の数々等はガジェ欲と所有欲を満たすものがある。
TANCHJIM製品全てに言えることではあるが、箱から本体からオプション品に至るまで、デザインが統一されており抜かりがないところは、いつもながら大変に好印象。
アンボックス体験も含めてかなり満足度がある。
驚く解像度の高さとバランス感の良さ
本機は解像度がとても高く、見通しの良さが半端ではない。
伴ってとても臨場感のあるリスニングが可能となり、没入感を高めてくれる要素となっている。
特にピアノ曲との相性は抜群であり、タッチ音やペダルの音まで聞き分けてしまうことができるレベルだ。
全体の印象として多少ブーミーなところはあるが、それはTANCHJIMらしさでもあるので気になるところではない。
ボーカルも非常にクリアで自然な印象があり、気になる箇所は無い。
演奏隊を周りにおいてしっかりと中心に存在しており、全体的なバランス感は極めて良好だ。
やはり女性ボーカルとの相性を重視している印象があるが、男性ボーカルも十分に響かせてくれる。
以上のことから、本機は以下のようなピアノ弾き語りで最大のポテンシャルを発揮できる印象がある。
一方で、”解像度が高すぎる”と思う一面もある。
Youtube music、Spotifyのようなハイレゾではないストリーミング楽曲を聴いた場合、かなりの確率で高域の割れを聴き取れてしまうのだ。
同じように、mp3などの楽曲でも高域にノイズを感じがちな印象がある。
圧縮ファイルである以上しょうがないことではあるのだが、本機ではそこまで明瞭に聴き取れてしまうということに注意が必要だ。
本機でのリスニングは非圧縮/非可逆圧縮音源のみを推奨したい。
付属イヤーピースの具合がなんだかとても良い
よく見れば「T」の刻印が確認できる本機デフォルトのイヤピ。
これ手持ちのイヤピのどれよりも具合が良い。
遮音性や装着感、音のバランスにおいて、どれよりも優れている印象がある。
このイヤピについて特に情報が確認できないのだけど、何か特別なのを使っていたりするのだろうか。
なんだかすごく良いよコレ。
TANCHJIM KARA の残念なところ
すぐには楽しめない。エージング必須。
本機到着後ウキウキで装着して聴き始めた際、筆者はリアルで以下のような顔をしていたと思う。
音はモコモコで明瞭さに欠け、一定の高域からコンプレッサーをかけたような不自然な寸止まり感があり、演奏隊がかなり後ろの方にいるにも関わらずボーカルはお立ち台の上で歌っている、というめちゃくちゃな音だった。
しかもこの次点で既に解像度が高すぎるため、より明瞭にトンデモ配置音を浴びせられるのである。
正直「やってもうた」とすら感じていた。
この価格帯でこの音はちょっとやばいぞと、完全にハズレ機種だと思っていた。
この妙に高い解像度に一縷の望みをかけてエージングを開始し始めたところ、上記のような良いところがグリグリと出始めてきたという背景がある。
本機のドライバはなんだかすごく固い印象があり、エージングが必須。
およそ20時間はピンクノイズかけっぱなしで放置するべきと筆者は考える。
本機は箱から出してすぐ楽しめるというものではなく、じっくりとドライバを慣らして育てていく必要がある。
時間をかけないと本機のポテンシャルは発揮されないという点で、少々扱いづらさを感じるものであった。
TANCHJIM KARA の総評
素晴らしい解像度と臨場感を味わえる高品質なイヤホン。
ただし本機の性能を引き出すには時間が必要。
スロースターターではあるが、育ちきった先にはとても素晴らしい音色を奏でる相棒になってくれる未来が待っている。
色んな意味で愛着が湧きそうな、楽しく魅力的なイヤホンだと感じた。