
Moondrop 和鳴 – Harmonが発売された時、筆者はそのデザインの異形さと3DDを一列に配置した特異さに大変興味を持った。
いつか聴いてみたいし、筐体を観察してみたいなぁと思ったことを覚えている。
で、まさかの一ヶ月も経たずしてSPモデルが出た。
えっ…無印くんの扱いは…?あ、そうなんだ…。
じゃあとりあえずSPモデル買いますね…よくわかんないけど…。
ということで MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP のレビューをしようと思う。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP の基本データ
水月雨(MOONDROP) について

水月雨(MOONDROP)は2015年に中国の成都で設立された成都水月雨科技有限公司が展開するオーディオ機器ブランドだ。
1万円程度のものから数十万円近いものまで、多種多様なイヤホンを展開している。
年々着実に技術力を増しており、それに比例して知名度と信頼を増している堅実なメーカー。
その甲斐もあって今では有力な高級イヤホン・ヘッドフォンメーカーの一員となっている。
以降はMOONDROP Ariaの記事と同じになるので省略。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP について

MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SPは、2025年8月頃に発売されたイヤホンだ。
MOONDROPと日本の音楽制作スタジオであるTAGO STUDIO TAKASAKIが共同開発したカナル型イヤホンだ。
このイヤホンの最大の特徴は、独自の「Harmon(和鳴)」音響構造を採用した点にある。
直径10mmのフルサイズ・ダイナミックドライバーを合計3基搭載しており、しかもそれを一列に配置するという特異な構成となっている。
故に筐体はコンパクトでありながら妙に横長なものと成っており、見た目のインパクトはかなり高い。
4つの独立した音響チャンバーも筐体に収められており、各ユニットの性能を最大限に引き出し、帯域間の自然な繋がりと立体的な音場を実現できるという。
各ドライバーの役割は以下の通り。
- 中高音域用:
軽量かつ高剛性なAl-Mg合金ドーム複合振動板を持つドライバーを1基搭載。
伸びやかで透明感のある高域再生と、微細なディテール表現を両立。 - 低域用:
MOONDROP独自の水平対向デュアルダイナミック構造に基づいたドライバーを2基搭載。
これにより、非線形歪みを効果的に抑えながら、パワフルで豊かな低音域の再生を実現。
で、肝心の無印との違いとしては、TAGO STUDIO Harmon-SPモデルは無印に比べて「ナチュラルで忠実な音質、自然なバランス」を目指しているとのこと。
また、フェイスプレートはアルミ合金パネルからメイプル材のウッドパネルへと変化している。
要はサウンドチューニングとフェイスプレートの違いという事だな。
ここは好みに合わせて選ぶべきだろう。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP の外観


まずは外箱。
意外と小さい。


外箱を取ると真っ白な内箱。
…と思いきや、よく見ると右下にうっすらと本機が描かれている。

内箱の蓋を取るとポストカード登場。

これが「TAGO STUDIO Harmon-SP」ちゃんですか。
長えしタゴちゃんでええか、と思ったけど、実はTAGO STUDIO T3-01-MDでもコラボしてるから多分ダメ。
じゃあもういつも通りの水月ちゃんで…。
桜かなにか、ピンク色の花々の中でポージングする水月の姉貴の図。
よく見れば髪飾りにも桜の様なものがあしらわれている。
TAGO STUDIO T3-01-MDは桜の木を使用したヘッドフォンだったのに対し、本機はメイプル(楓)なのでイマイチ関連性が見いだせない。
楓の花にしては花糸が短いし…。うーん?

ポストカードを取ると本体登場。
配置や収納はMOONDROP Aria 2の様な簡素なものでちょっとびっくり、というかガッカリ。
いや、だってAria 2の3倍くらいの値段設定ですぜ?

内容物は上記の通り。
やっぱりAria 2と同じ。


ケース、ケーブル格納もやっぱり同じ。

3.5/4.4mmの換装式編み込みケーブル。
ケーブルは太くてしなやかで丈夫そう。
ケーブルに関する情報は公式からは特に無いので、格別力は入れてないのかも。




何コレキモーイ!
フェイスプレートから見れば、小柄でかわいい筐体であるのだが、横から見ると妙に長い。
しかも薄っすらと内部を観察することができ、なんだか直列配置したボタン電池の様なドライバ群が視認できる。
ノズル部分と相まって何かのスイッチの様な筐体であり、ノズル部分を押下することで起爆できそうな雰囲気すらある。
とても興味深く面白いデザインだ。
あ、勿論フェイスプレートもかわいいネ。

体重測定。4.2gを計測。
こんな見た目だが、意外と小柄で軽量であることがわかる。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP の良いところ
大変聴きやすいナチュラルサウンド

本機はとにかく“大変聴きやすい”。
何か角が立っているとか際立っているとかは無く、大変に扱いやすく長時間のリスニングにも耐えれるポテンシャルがある。
木のフェイスプレートから感じるような自然で優しい音色を体現しており、出力される音色の印象はとても良い。
抜け感は少々薄いため、開放的な印象は薄いが解像度は高く、十分な臨場感が有る。
濃厚な重低音が響くため、密閉型のヘッドホンのようなリスニング体験ができる。
低音の響き方はMOONDROP VARIATIONSのそれに近い印象があり、他のMOONDROP製品とは少々ちがった味付けという印象。
入手してから1ヶ月以上経つが、この出力傾向に変化がない。
初鳴らしから本機のコンセプトが解るような無らし方を堪能することができる。
いってしまえば、徹頭徹尾このスタンスなんだな、という解りやすく潔いイヤホンだ。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP の残念なところ
なんか中途半端
本機の音色の傾向は上述した通りだが、では誰に向けた製品なのか?と問われると結構困る。
モニター向けにしては低音が強く、MOONDROPのイヤホンとして楽しむにしては中高域の一番面白い箇所が控えめにされており、大分に評価がし辛い。
特に女性ボーカルの魅力を引き立てる能力が弱いようで、上述したように抜け感が無いことからサスティンが弱く、ボーカルが遠くに配置されているような位置感で耳に届く印象がある。
一方で、男性ボーカルであればジャンルを問わず魅力的に響かすことができ、かなりダイナミックに楽しむことができるものであるが、それでもよく聴けば中高域の不足感が気になってしまう事には変わりない。
MOONDROPのイヤホンとして楽しむには臨場感が弱い。
イヤモニとして聴くにはバランスが悪い。
そんなどっちつかずなイヤホンという印象だ。
MOONDROP x TAGO STUDIO Harmon-SP の総評

良いイヤホンではある。ただし大変に評価が難しい。
MOONDROPファンの人も、TAGO STUDIOファンの人も、なんかコレ違うってなりそう。
音は良いし造形も良いので、相対的な評価しては優良イヤホンになるのだろう。
が、この価格帯にしては安っぽい梱包やオプション品、そしてどっちつかずの出力傾向という点で気難しい製品という印象もある。
入手に際し試聴は必須。
できれば無印との比較が望ましい。
ハマる人にはハマる。そんな特攻イヤホンだと感じた。